こんにちは、色鳥烏工房のとりからと申します。
今回は、本好きの私が最近出会った素敵なご本を紹介します。(3回泣いた)
こんな人に読んでほしい
- 現実世界で夢や希望を見失っている人
- 友情を信じる人
- 旅人(過去に旅をした人、これから旅に出る人)
- 心臓病など大きな病と関係のある人
目次1 この本の紹介(ネタバレなし)2 あらすじ3 友情について、映画「スタンド・バイ・ミー」を参考に4 心に届く言葉たち5 奇跡の連続はどうして起きたのか?6 最後の文章の意味するところ7 心臓病 自分でも出来る事8 作者と出会って感じたこと
1 この本の紹介(ネタバレなし)
最初は、まだ読んだことのない方にネタバレなしでこの本を紹介していきます。
まず、本のタイトルと作者など
「旅するギターと私の心臓」
作者 松原良介
発売 幻冬舎
定価(本体1200円+税)
次に表帯の文章
異国の地で失くしたのは、8000円で買った世界にひとつだけのギター。
大切なものを見つけるための無謀な冒険が、旅人たちの運命をつなぐ。
続いて、裏帯の文章
「旅人って、すごく強い絆でつながっているんだ」
東南アジアを旅していた哲也は、心臓の病に倒れ、愛するギターを失くしてしまう。悲しむ友の姿を見た祐介は、日本を飛び出すことを決意する―。
実話をもとに綴られた、感動のストーリー。
つまり、簡記すると
旅の途中に心臓病で倒れた哲也が失くしたギターを、
友人祐介がそのギターを探すために旅に出るという実話。
という物語なのだが、そもそも
- 友人のために海外に行って旅をする?
- 仕事や家庭はどうするの?
- 本当に実話?? フィクションがあるんじゃないの?
と疑ってしまいました。
でも心配することはありませんでした。
どうしてこんなことになったのか、読めばあなたも真実の物語に引き込まれます。
親友って簡単に言うけれど、これほどの真実の友情が現実に存在したこと、友人が互いに相手のことを想い会う優しさが、本当に嬉しかった。
読めば読むほど、これが実話であるということが胸を打ち、生きることに勇気をくれます。
また、東南アジアなどを旅する話が多いので、バックパッカーなど実際に旅をしていた人は、より臨場感や親近感が湧くと思います。
そして、これから旅をしようという人には、夢と勇気を与えてくれますよ♪
このお話のもう一人の主人公哲也は心臓病で倒れてしまうのですが、大きな病気を抱えた人の気持ちにも触れているので、身近にそういった方がいる方には共感できるところがあるかも知れません。
(私は、身内が白血病を罹患した経験があるので、あの時こんな気持ちだったのだろうかと想像してしまいました。)
あと、これは読めば十分わかるのですが、本好きな方にも楽しめる内容となっていると思います。
あくまで個人的な感想ですが、例えば辺見庸さんの「もの食う人びと」を初めて読んだときとても感動しました。
この本はドキュメンタリーで現実のことを書いていて、それ故に刺さったんですよね。
本書も同じように、実話であることが文章を読んだ後から押し寄せてくる。
類まれな文章表現でなくても、それぞれの登場人物の言葉に説得力があるんです。
それと、最後にちょっとした謎かけがあって面白いです。もしかしたら気が付かずに読み終える人もいるかもしれません。これらが本好きの方にもおススメな理由です。
以上になりますが、ネタバレなしでお薦めするのはとても難しかったですね。w
まだ未読で、もし興味を持って頂けた方は、ぜひ読んでみてください。
注意:これ以降はネタバレ含んだ個人の感想・解説等になりますので、自己責任でお読みいただきますようお願いします。
2 あらすじ
物語の始まり
13歳の頃祐介と哲也の二人は、一緒に8000円のギターを購入し音楽を通じて友情を深める。
時は流れて
それぞれ社会人になり別々の生活を過ごす中、祐介は哲也から一緒に音楽の仕事をしようと誘われ受けることに。
新しい仕事にも馴染んできた矢先、哲也は心臓病を罹ってしまう。
病院のベッドで死を意識しながら勇気づけられたのは、世界をギター1本で旅するある男のブログ。
哲也は、自分も世界に発信することでどこかの誰かに勇気を届けれるかもしれないと決心し、ギター片手に世界への旅に出る。
旅と音楽を通じて出会う、様々な人たちとの冒険の日々。
しかし、そんな生活も長くは続かず、ある時哲也は心臓病が悪化して倒れてしまう。
なんとか一命は取り留めたものの、日本の病院に送り返されもう自分の心臓が弱りはて長くはないことを知る。
そこへ祐介が見舞いに駆け付け、哲也に言われたことは、子供の頃二人で買ったギターを失くしてしまったことへの謝罪だった。
次第に生きることへの希望を見いだせなくなっていく哲也に対して、祐介が出した答えは、
失くしたギターを探して旅に出る
ことだった。
交差する二人の旅路、二人の運命。
旅先で出会った友人たちとの数奇な運命を紡いで、ついに祐介は哲也が失くしたギターと再会する。
相手を思いやる優しさから始まった、二人の物語。
次第に人と人の出会いを加速させ、世界を巻き込んで小さくも大きな奇跡を生む。
嘘みたいなホントのお話。
3 友情について 映画「スタンド・バイ・ミー」を参考に
友情について
少し遠回りするのですがお付き合いください。
突然ですが、映画「スタンド・バイ・ミー」最後のシーンでのセリフ、吹替では、
”私は彼を忘れることはないだろう。
友情は永遠のものだ
私はあの12歳の時に持った友人にまさる友人を、その後二度と持ったことはない。
誰もがそうではないだろうか?”
とあります。
そして曲の「スタンドバイミー」が流れてくる。
最高の映画ですよね。子供の頃何度も友人と見ましたw
大人になってからこの映画をみて、友情の捉え方が子供の頃と違って見えたんです。
子供の頃の捉え方は、
中学の先輩後輩の関係を知る前、
友人に気づかいや見栄をはる必要のない、ありのままの自分。
そんな自分を無条件で受け入れてくれる友人との友情は、掛けがえのないもの
という認識でした。子供ながらにそんな友人を持つことに憧れました。
簡単に言ったら鼻水垂らしたアホな自分でも友人として認めてくれて、
喧嘩をしてもすぐ仲直り、そんな時代。
あの頃に戻れるならどんなに楽しいでしょうか。
だからこそ、君がいなくて寂しい(ずっと側にいて)のスタンドバイミーなんですよね。
こういった捉え方も正解だと思います。
あくまで個人的な解釈ですが、今はまた違った見方ができるなと、
映画の主人公ゴーディは、親友クリスの勇敢な死を知ったあと、作家としてパソコンに向かいこのスタンドバイミーのお話を書いているという設定だと思うのですが、ここを考えます。
どうして、クリスの死後にこの話を書いたのか?
もちろん当時のこと、クリスの事を懐かしんで書いた部分はあると思います。
けれどそれだけではない、旅立ったクリスへの感謝と餞(はなむけ)のメッセージだったんではないかと思うのです。
主人公ゴーディは最終的に作家になります。物語の中でも出てきますが、「お前は作家になれる」と主人公の背中を押し、そして主人公の話を楽しんで聞く仲間たち。
主人公ゴーディが作家になれたのはまさに当時の彼らがいたから、つまり
君がいなくて寂しいスタンドバイミー を超えて
(君たちとの友情が、つらい時もずっと自分に寄り添ってくれた、だから作家になれた)
君がずっとそばにいてくれた、だから寂しいのスタンドバイミー
なのではないかと思うのです。だからこそゴーディは作家として物語を書くことがクリスへの感謝と旅立ちへの餞になると考えたのではないでしょうか。
最後のパソコン内の文章に”Jesus”と出てきますがずっとどういう意味なのかと感じていたのですが、
感謝と寂しさと餞、複数の意味で捉えるとまさにこれしかないという素晴らしい表現だと思います。
なんだかまた見たくなってきましたw。
ごめんなさい、遠回りをして。
友情つまりここなんです!
本書「旅するギターと私の心臓」で私が一番感動したところは。
子供の頃、祐介と哲也が培った友情。
その友情が大人になった今でも大切にそこにあって、そして相手のために自分の人生をも掛けて旅にでる。
そんな友情この世にあります?
私はこのお話を読んで自然に映画「スタンド・バイ・ミー」のことを思い出しました。
そして、作家松原さんの勇気と相手を思いやる気持ちの美しさに感動してしまいました。
(友情って映画の中だけじゃなかった、世の中にこんな素敵な人がいるっていうだけで感謝しかないと思うのです。)
4 心に届く言葉たち
ここでは、本の中に沢山ある素敵な言葉のうちから、二つだけ紹介したいと思います。
一つ目は、タイのバンコクで知り合った日本の消防士、救急隊員の言葉、
”失敗の定義って何ですかね?”
この問いに対する彼の言葉は、
”あとで後悔することです”
とあります。また、
”あの時もっとできたんじゃないか?が一番怖い”
だから、いつでも全力で挑めるように準備しています”
この言葉は、救急隊員として人の命を預かる仕事の中、時に間違った判断をしてしまうこともあるかもしれない、だからこそ後悔をしないうように日々最善をつくしているという、彼自信の人柄をそのまま表すような言葉でした。
そしてこの後哲也は、そんな彼の心臓マッサージを受けながら病院へ搬送され一命を取り留めます。
人と人の思いが繋がる奇跡の瞬間でした。
(私もこの言葉のように、後悔のないように、それが失敗と感じないように日々頑張って生きなくちゃなと感じました。)
二つ目は、哲也が病に打ちひしがれた時の言葉、
”心残りは祐介だけだった。
もう一度会って謝りたかった。
次に彼に会うまで、私はこれ以上自分を見失うことなく生きていられるだろうか。”
私は幸い健康で、ただ兄が大きな病気をしたことがあり、その時の兄もこんなことを思っていたのだろうかと考えさせられます。
命に関わる病気に罹患した人の、つらさと切実な思いが表現されていると思いました。
本著の最大の魅力である実話というところで、それぞれの登場人物達の言葉が、
この世界の現実の言葉として、読者に伝わってくる。
だからこそ、実際に聞く生の言葉のように自然と心に刺さってくるんですよね。
5 奇跡の連続はどうして起きたのか?
この物語で感動したことの一つは、奇跡が繋がっていくこと。
たった一つの奇跡ではない。
ほんとうにざっくり繋げていくと、
子供の頃の出会いとギター → 社会人になってからの再会 → 心臓が弱るも一命を取り留める
→ 旅ブログとの出会い → 哲也覚悟を決め旅へ → 旅先での人との出会い → 心臓病再発
→ 友人と救命士により助けられ再度一命を取り留める → ギターを失くす → 祐介と再会
→ 祐介がギターを探す旅へ → 旅人同士が繋がりついにギターが見つかる
→ 憧れの旅ブロガーが励ましに → 最後はこのお話が本に
読んで頂いた方には分かると思うのですが、登場人物の誰かが欠けていたり、途中で諦めていたらこの話は、この本はここに存在しなかったとうこと。
まさに奇跡が繋がってできた結果だと思います。
でも、どうして奇跡の連続が起こったのか?
その答えは、
人が人を思いやる心、優しさの心
にあるのではないでしょうか。
哲也が祐介を思いやったように、祐介も哲也を思いやった。
旅先で出会う人々も、彼らの人柄に惹かれ、互いを尊重し思いやった。
友人の失くしたギターを探しているという話を、誰も決して馬鹿にはしなかった。
それどころか、この美しい友情と彼らに魅了されていく。
出会った人の誰かが諦めていたら、この物語は決して生まれなかったけれど、
きっとみんなこの奇跡の物語を望んでいた。
嘘みたいな奇跡を紡いでみたいと、きっとみんなそう思ったに違いない。
そうさせたものは何か?
きっと人種や国、性別を越えて、人が人に親切にしようとする優しさの心なのだと思う。
私はそう感じました。
6 最後の文章の意味するところ
本著最終部分に、謎かけがあると思うので考察したいと思います。
登場人物で出版社の塩見記者が、宇山祐介に
”その後、哲也さんはどうなったのですか?”
と質問するシーンで、宇山祐介は
”その質問は、とてもいい質問だと思います”
と回答し、コーヒーにミルクを入れます。
そして、最後の文章、
”グラスのなかでミルクとコーヒーが不規則に混ざりあう。
まるで互いの世界を変えるように。”
と締めくくられる。
これはあくまで推測ですが、
このシーンでの宇山祐介は実は、野崎哲也なのではないかと。
根拠は、
- 宇山祐介は物語の中でずっとコーヒーが苦手なこと
- ストレートでコーヒーを飲んでからミルクを入れる飲み方は、哲也の飲み方であること
- 前段で、韓国から友人が来るといていること
- 病気を抱えた人の気持ちと使命感の表現が、哲也そのものであること
- 互いの世界を変えるようにの一文
など、読んでみたら感じる違和感と、そこへ誘導する仕掛けがあるように感じました。
もちろん、私の邪推かもしれないのですが。
このように読み解くと、哲也は祐介の行動で立ち直り、今まさに心臓病を抱えて不安になっている人の為に活動していることになります。
本当のハッピーエンドと、今この瞬間でもつらくて苦しい人に手を差し伸べようとしている事実。
物語という虚構と、この世界という現実を繋ぐ巧みな表現。
実話だからこそできる演出だと感じました。
皆さんはどう思われたんでしょうか。
7 心臓病 自分でも出来る事
私は、この本を読み終わってすぐにしたことがあります。
それは、
○ 運転免許証の裏書に臓器提供を示すサインをしたこと
です。
皆さんは知っていましたか?
自動車の運転免許証の裏には、自分が亡くなったときに自分の臓器を提供してもいいという意思表示ができるようになっています。
私は、以前の免許には記載していたのですが、免許更新してからはほったらかしてありました。
(反省)
これはあくまで任意、個人の自由な記載ですのであしからず。
ただ、自分が見ようとしていなかっただけで、意外と身近な所でも関われることがあるんだなと、あらためて感じました。
心臓病について、私も少しだけ調べました。実際に、いろんな問題もあるようです。
病気については、もっといいサイトがあると思うので素人の私が記載するものではありませんが、
ただ、臓器提供があればもっと長く生きれた命がある、という事実を再認識しました。
少しずつでも、この問題が解決していくことを願っています。
8 作者と出会って感じたこと
まずは、本書巻末の著者紹介から
松原良介(まつばら りょうすけ)
1980年5月19日 北海道札幌生まれ。
「旅するギターと私の心臓」 本著巻末 著者紹介から
札幌市内の高校を卒業後、上京。
2014年、友人のギターを探すため、世界一周の旅に出る。
訪れた国は100ヵ国を越える。
2017年帰国。関西を中心にイベント等で旅の話を通じて移植待機者の
思いを伝える活動をしている。
と記載があります。
また本書は、2020年4月14日の発行になり、作家松原さんが帰国後約4年間掛けて執筆したものと推察されます。
見出しにあるように実は、私はこの松原良介さんと偶然お会いしたことがあります。
2022年9月25日、文学フリマ大阪というイベントがあり、そこへ偶然来場したときの話です。
文学フリマのイメージは、簡単に言うとコミケの小説や文学の特化版という感じでしょうか。
会場は、各ブース長机の半分のスペースを一人分として配席してあり、みなさん素敵な個人本を作成していて、たいていは宣伝や小物、小さな個人本を所狭しと置いてキラキラとごちゃごちゃがごった返した活気のある雰囲気です。
会場入口から入ってまもない所に、松原さんのブースがあり、優しそうな青年がちょこんと座っていました。
派手な宣伝もなく一見して地味な雰囲気なのに、置かれた本だけが市販の豪華なハードカバーの単行本だったので一体どんな方なのだろうかと見ていると、眼が合てしまってそのまま声を掛けました。
そこでこの本のあらすじや、ご自身が世界に旅に出て体験したお話をまとめたと、簡単に説明してくれたのですが、友人のギターを探すために仕事を辞めて旅に出た???となってしまいすぐに聞き直してしまいましたw
嘘みたいなホントの話ですとおっしゃってたことに感動して、すぐに購入を決めました。
そこで松原さんが「こうやって直接手渡しするのは初めてで嬉しいです」と言ってとても喜んで下さって、逆に私も嬉しくなるわ、恐縮するわで感動してしまいました。
売り上げの一部は心臓病などのチャリティーになるそうです。
終始、松原さんの優しいお人柄がとても出ていて、偶然にも出会えたことに興奮しました。
これは、その後本著を読み終わって感じたことですが、
松原さんと哲也さんは、今もまだ旅の途中なのだと感じます。
ギターを探す冒険は終わったけれど、病気で苦しんでいる方を救う旅は始まったばかり、
今まさに戦っている。
そんな気持ちに触れることで、私も生きる勇気を貰いました。そして、何かできることはないかと思いこの紹介記事を書かせて頂きました。
ブログでこのように記事を書くのも初めてのことで、この本の魅力をどこまで表現できたかは分かりませんが、もし少しでも興味を持って頂けたら嬉しく思います。
最後まで読んでくださった方々、ほんとうに有難うございました。m(__)m
この世界をもっとハッピーに!
とりからでした。